「それでもボクはやってない」 | こだわりの館blog版

「それでもボクはやってない」

それでもボクはやってない

2007年の邦画ベスト1!(予定)


1/27 Tジョイ大泉 にて


監督・脚本:周防正行
音楽:周防義和
出演:加瀬亮、瀬戸朝香、山本耕史、もたいまさこ、田中哲司、光石研、尾美としのり、大森南朋、
   北見敏之、田口浩正、本田博太郎、小日向文世、高橋長英、役所広司、他


 フリーターの金子徹平(加瀬亮)は、就職試験の面接会場に向かう通勤ラッシュの電車で
 女子中学生から「痴漢したでしょ」と訴えられてしまう。
 まったく身に覚えのない金子は、話せば分かってもらえると思い、大人しく駅の事務室に行った。
 しかし、「ボクはやってない!」という訴えもむなしく、そのまま警察に連行されてしまう。
 その日から、留置所暮らしを余儀なくされた金子の無実を訴える戦いが始まった。


傑作です!素晴らしい!
まだ2007年は1ヶ月しか経ってませんけど、
2007年の私の邦画ベスト1はこの作品でまず決定でしょう。
あとは人生を変えてしまうほどの大傑作が
今後登場したならば、話は別ですけど(笑)。

この作品はナイトショーで見ました。
0:45の上映開始、上映終了はなんと3:15!
映画好きの私もさすがに寝てしまうか?と危惧していた。
…ところが見てみてびっくり。
寝てしまうどころか作品に釘付け状態。
もう目を、そして耳を全開にして食い入るように見てしまった。


小説に映画とついこの間まで、あれだけ「魂萌え!」 に入れあげてたのに
この作品を見終わった途端に、頭の中が全てこの作品にスイッチしてしまいました。


周防正行監督作品「それでもボクはやってない」

新作は「Shall we ダンス?」以来11年ぶりという。
随分待たされたもんだが、しかし待ったかいはあった。
その手腕はちっとも鈍ってません。
いや前作までがコメディ色が強い【How toもの】だったことを考えると、
今回これだけのシリアスな題材をコ難しい法律用語を羅列する事なく
一気に見せ切るという手腕は昔より一層研ぎ澄まされたのではないでしょうか。
恐るべし周防正行監督!


観客によってはこの作品を見て
「この主人公が本当に【痴漢】をやったのではないか?」
と疑問に思った人がいるそうですね。
私は見ていて、そんな事は露にも思いませんでしたね。
完全に彼は「冤罪を証明できるか」の一点で見ておりました。
自分が男ということもありますし、
やっぱりこういうトラブルに巻き込まれてしまったら「かなわないなぁ」と思って見てましたから。
証言で【痴漢された方】の女子中学生が証言に立ちますが、
彼女が痴漢を告発したその勇気は買いますけど、やっぱり冤罪なんだから証言も無力だろう
ぐらいしか思えなかったですね。


逆に見ていて「たかが痴漢じゃない」と思ってしまう、
男としての自分の【身勝手さ】すらも浮き彫りになってしまって
そんなことを思ってしまう自分に思わずゾッとします。
パンフレットにも書いてあったように【痴漢】は、被害者の精神的な被害を考えてもやっぱり【悪】。
作者は決して【痴漢】の善悪を描いたのではなく
描こうとしたのは長期間の拘束で、してなくても思わず「そう思わされてしまう」
現在の裁判制度への怒りであると思います。


「実は【痴漢】をしたのでは?」という疑問は
女性側の意見に多いようですが、この作品は見る人によっていくらでも解釈できる
本当、奥深い作品だなぁと思いましたね。
それは作者がこの主人公に思い入れすることなく
クールに、極めて客観的に裁判の事を描いているため
見る方は陪審員にでもなったかのような感じだからでしょう。
劇中で台詞ひとつでも「冤罪」という言葉が出てこなかったこと一つとっても
いかにこの作品が極めて客観的に描いていると言う事がわかります。


でも、この作品を彼は【有罪】か【無罪】かという単純な図式で解釈するのはどうかと思います。
【有罪】か【無罪】かよりも、長期間の拘束でそれすらも全く不明な不条理な状態になってしまう
現在の裁判制度の【不条理さ】、そして作者のそれに対する怒りの方に
私たちはもっと眼をむけるべきでしょう。


なんだか「頭のいい監督」による「頭のいい」作品には
やたらと硬い文章になってしまって、
なんだかまとめてるんだか、まとまってないのやら…
しかし、こう硬い文章にはなってしまいましたが、
実際の作品はとにかく「面白い!」の一言に尽きます。
なんか硬そうな作品だなと思われている人がいたら、とにかくダマされたと思って見て下さい。
きっと周防正行監督の見事な演出に2時間半、
瞬きするのも勿体無いほど興奮させられますから!


先日、仕事で某フリーペーパーの営業さんとのちょっとした雑談で
この作品の話になりまして、
その人曰く
 「周防監督作品はほとんど見ている」そうなんですが、
 「この作品は見る気がしない」と。
なぜなら
 「周防監督はコメディの監督」だから、
 「今回のようなシリアスな作品はお門違いでダメなんじゃないか」と。
だから私はその人にいいました。
 「周防監督はコメディが得意なんじゃない」と。
 「周防監督は頭がいい監督なんだ」と。
 「頭のいい監督は何を撮ってもうまいんだ」と。
 「必ず見てください!」と。


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