「どろろ」 | こだわりの館blog版

「どろろ」

どろろ

【時代劇】なのに【無国籍】テイスト満載!


2/10 Tジョイ大泉 にて


監督・脚本:塩田明彦
原作:手塚治虫
脚本:NAKA雅MURA
出演:妻夫木聡、柴咲コウ、瑛太、杉本哲太、土屋アンナ、麻生久美子、
   きたろう、山谷初男、中村嘉葎雄、原田芳雄、原田美枝子、中井貴一、他


 戦国の世、天下を我が手にと望む武将・醍醐景光(中井貴一)は、
 魔物たちに自分の子である百鬼丸(妻夫木聡)の体、48ケ所を差し出してしまう。
 20年後、百鬼丸は自らの体48ヶ所を取り戻すため、魔物退治の旅に出る。
 やがて男装のコソ泥のどろろ(柴咲コウ)が百鬼丸と出会い、
 奇妙な2人の妖怪退治の旅は続く…。


もともとあんまり見る気はなかったのですが、
監督が「どこまでもいこう」「黄泉がえり」「カナリア」と、
マイナーとメジャーの作品を交互に発表している異才・塩田明彦というのが
いかにこのメジャー大作を描くものかと目を引き、
また公開後もこの作品、予想以上のヒットをしているようで、
果たして現在絶好調の邦画界を象徴するような作品なのだろか、
「どんなもんなんだろう」と野次馬根性丸出しで見に行ったのであります。

これがなかなか面白かった。


手塚治虫の原作は未読。
漫画の好きな人には手塚治虫という方は【神様】のような存在なんでしょうけど
どうも私には手塚治虫の作品というのは、どれもこれも【長編】ばかりで
とっかかりが掴めないばっかりに、読む食指が今まで沸かなかったんですね。
もともと漫画を読まないということもあるんですけど。


なので、この作品が【手塚ワールド】をどこまで具体的に描けたかについては言えないのですが、
単純に1本の娯楽作品として見ても、何か近年の邦画の元気さを象徴してるかのような作品で
充分面白いと思います。


この作品、原作は【時代劇】なのでありますが、
映画では逆に【時代劇】ということに縛られない
自由で大胆な発想をふんだんに盛り込んでいるのが、
かえって映画オリジナルとしての【無国籍】な伝奇ファンタジーへと変換させていて、
そこが今まで邦画では見た事のない、いい効果をあげています。


例えば話題のニュージーランドでのロケーション。
本来【時代劇】ならばニュージーランドの広大な風景は画面が浮いてしまうのでしょうが、
伝奇ファンタジーであるため、これが画面に異様な効果をあげていて、
海外の広大な風景の中で、時代劇スタイルのドラマを見ていると
まるでここは日本のような、日本でないような…
実に不思議なムードを全編に醸し出しています。
その雰囲気は、ちょっと今まで見た事ないテイストでしたね、面白かった。


またアクションシーンでは香港お得意のワイヤーアクションを使っているのも斬新。
本来なら【チャンバラ】であり【殺陣】重視であろうところなのに…。
また製作者たちの【遊び心】は音楽にも及び時代劇の特有の音楽など皆無。
アジアの様々なテイストの音楽を盛り込んで、この作品を【時代劇】から一気に
【無国籍】アクションにまで際立たせて、より一層効果的。
(だからってエンディングがミスチルっていうのは、どうなんでしょ?)


漫画の原作の映画化は、その原作のイメージを強烈に引きづるため難しいものですが、
ならばいっその事、映画では原作とは全く異なる、一つの【無国籍】伝奇ファンタジーを作ってしまえ
という、製作者たちの【大胆な発想の転換】がこの作品の成功の源でありましょう。
但し、魔物たちのクリーチャー造形までは【大胆な発想の転換】とまではいかなかったようで
原作のクリーチャーを忠実に実写化してしまったがために、
ちょっと安っぽい造形になってしまったのが残念。
しかしこれまで【大胆な発想の転換】をしてしまったら、
もう「どろろ」じゃなくなってしまうか(笑)。


またこの作品、主役の二人がよかったですね。
妻夫木聡はちょっとミスキャストでは?と見る前は思わされたのですが、
ちょっと陰のある雰囲気を充分漂わせていて素敵です。
こういう役も演じられるんですね、妻夫木は。
逆に柴咲コウはハマリ役(笑)。
キャラにピッタリの役柄でノビノビ演じてるのが見ていて伝わってきます。


またこの作品で特筆すべきは脇役が充実してるところ。
中村嘉葎雄に原田芳雄と、まずこういうジャンルの作品には出ないだろう
という俳優を出演させたキャスティング力には脱帽
さすがこの二人で画面に風格が出て、引き締まります。
また悪役の中井貴一が意外にもよかった。
私、今まで中井貴一って苦手な俳優さんだったんですが、
この作品の悪役はホント貫禄があって、見直してしまいました。
今後ももっと、もっと悪役で憎まれて欲しいですね(笑)。


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