人形浄瑠璃文楽二月公演<第二部> その弐 | こだわりの館blog版

人形浄瑠璃文楽二月公演<第二部> その弐

2月文楽

2/19 国立劇場小劇場にて


驚いた!
最長老の【義太夫】語りのその声量にのって
人形から【色気】があふれ出てるなんて…。

昨日からのつづき


主役の玉手御前の人形遣いは人間国宝・吉田文雀
いや、驚いたのはその玉手御前のなんと色っぽい事か。
文雀師の醸し出す色気には、この【危ない女】玉手御前も
「これぐらいしちゃうワな」と、ついつい納得してしまいます(笑)。
それくらい恋に焦れる女の姿が、人形であるにもかかわらず濃厚に映し出されているんです。


「母様」と外から呼びかけ、慌てて周りを見計らうその姿しかり、
俊徳丸に恋焦がれるあまり、半身を捩って嫉妬に狂うその姿しかり…。


失礼を承知で言えば、文雀師のあの風貌から、
あの色気が人形を通じて漂ってくるのが本当驚きなんです。
まずは無表情とも言えるその文雀師の風貌に
私はいつも「不機嫌なんじゃないか?」と思わされるくらい。
しかし遣う人形からは喜怒哀楽はおろか、
今回などは年増の女の色気までもが濃厚に漂ってくる。


「私を見ずに、とにかく人形を見てください」
全く無表情の文雀師からは、
そんな【芸談】のようなものが読み取れるかのようであります。


そして何と言ってもこの公演で見逃せない、聞き逃せなかったのは、
もう一人の人間国宝・竹本住太夫浄瑠璃であります。
これが本当に素晴らしかった
義太夫語りの最長老、80歳を超えてのあの声量、
あの情感の素晴らしさ、そして若々しさ!


イヤホンガイドでは幕間に住太夫のインタビューが放送されていたが、
「もう歳なので疲れる、しんどい」と愚痴っぽくこぼしておりましたが
実際の語りを見ると、「どこがしんどいの?」と思えるほど、
他の太夫連中がひよっ子に思えるほど、その迫力は圧巻であります。

もっともご本人は
「【合邦庵室の段】は情感が途切れるので本来なら一人で語るべき」というポリシーだそうですから、
切りの場のしかも後半のみの語りくらいは訳ないのかもしれませんけど…。


住太夫師が語るは【合邦庵室の段】切りの場の後半、芝居の最大の山場。
俊徳丸への嫉妬に狂い、ついには「俊徳丸の顔を醜くしたのも自分の行い」と告白する玉手御前に、
父親・合邦は溜まりかねて娘に刃をむける、
が、刺された玉手は息も絶え絶えに「実は…」で語る真実は…。


真実を聞いた合邦の台詞になると、
住太夫師の浄瑠璃はさらに一層の迫力を増します。
シーンと静まり帰った場内に住太夫が語る合邦の嘆き
「ヲイヤイ!ヲイヤイ!!」
…そこにはもう義太夫も人形もない。
住太夫の姿を借りた合邦本人の嘆きであり、
人形の合邦から発せられる嘆きにも聞こえる。
そしてその深い嘆きに観客はさらに一層「シーン」と静まりかえらざるを得ない。

合邦の人形は吉田文吾
文吾の合邦も男臭くて良かったのだが、住太夫の義太夫が加わると鬼に金棒、
もう数倍素晴らしくなってくる


文楽は人形・義太夫・三味線と舞台上で3つのパートに分かれて演じられますが、
私はこのシーンで、3者が舞台で一体となり

玉手御前と合邦、その人そのものが舞台で演技している瞬間を見たような気がしました。
まさに文楽の醍醐味をこのシーンで味わったのかもしれません。

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