「雪まろげ」 | こだわりの館blog版

「雪まろげ」


雪まろげ

3/10 帝国劇場 にて


作:小野田勇
演出:マキノノゾミ
出演:森光子、石田純一、中田嘉子、森口博子、山田まりあ、青山良彦、田根楽子、
    金内喜久夫、大塚道子、米倉斉加年、他


何気に私は森光子の芝居を数多く見ている。
結構定期的に見ている。
…実は秘かなファンかもしれない。

ざっとあげてみよう。

 ● 「流水橋」(芸術座)
 ● 「放浪記」(芸術座)
 ● 「紙屋町さくらホテル」(新国立劇場)
 ● 「桜の園」(新国立劇場)
 ● 「おもろい女」 (芸術座)


今は無き芸術座に両親を連れて行ったこともあれば
おばちゃんたちに混ざって見に行った事もある。
井上ひさしの新国立劇場の柿落とし作品だというのに
大女優を遅筆地獄に追い込んだ舞台(「紙屋町さくらホテル」)もあれば
チェーホフの代表作を日本に舞台を置き換えた
実験的な舞台(「桜の園」)も見た。


杉村春子も亡くなり、山田五十鈴も第一線から遠ざかった今、
舞台で「大女優を見た!」という満足度を得られるのは今や
森光子以外ちょっといないんじゃないでしょうか。

しかも森光子のよさは「大女優でありながら舞台の固さが全くない」ことと
「時に実験的な事へも挑戦する」その【女優魂】みたいなもの。


舞台は常に明るく、観客もケラケラ笑いながら森光子の奮闘する姿を見て楽しんでいる…
その舞台の楽しさに私は毎回惹かれて見に行ってしまっているわけです。


しかし森光子ももう87歳
あとウン十年彼女の舞台を楽しむのはもう不可能な事。
今のうちに見ておかないと、と失礼を承知の上でこう思ってしまうのは人の常。
そして早速といってはなんですが彼女の当たり役「雪まろげ」
今回いそいそと見に行ったわけであります。


この「雪まろげ」はそもそも芸術座で大当たりをとったお芝居。
それを芸術座が現在改装中ということで(シアタークリエなんていう劇場になるらしいが…)
帝国劇場という大舞台でやったようだが、
芸術座の演目をそのまま帝国劇場でやること自体がどうかなぁと思う。


芸術座は確かキャパ700席ほどの劇場であったはずだ。
それが一気に倍以上、2000席近い帝国劇場という【器】はちょっと大きすぎやしないか
それに「雪まろげ」は芸術座という
小じんまりした劇場だからこそ 「面白かった」芝居なんじゃないだろうか。
青森・浅虫温泉のウソツキ芸者・夢子(森光子)がついた
小さなウソがあれよあれよという間に大きくなってしまう
そんな一騒動を描いたこの戯曲を、帝国劇場でみてしまうと
なんか【器】が大きすぎてひどく大味な舞台に見えてしまうのであります。


また主役の森光子は大女優であってもお世辞にも、
それほど「大柄な女優」じゃないもんですから
帝国劇場という大舞台では、なんか小さな存在に見えてしまって、
あまり演技も動き回らないのものですから尚更。
「放浪記」といい、この戯曲といいやっぱり芸術座という【器】が
小じんまりと、また客席の隅々までをも楽しませる
最適なものだったのではなかったでしょうか。

それに石田純一、森口博子、山田まりあ
共演者たちも、なんか芸術座でも器が余りそうな
…とてもじゃないが帝国劇場向けの役者さんたちじゃないから
なおさら大き過ぎた【器】の穴は埋められないなぁと余計思ってしまいます。


森光子も87歳、でも「やっぱり老けたなぁ」とは決して思いたくない。
戯曲に分不相応の劇場だったからこそ、
なんかスカスカな印象を受けてしまったと、
私は思いたい。


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