「さくらん」 | こだわりの館blog版

「さくらん」


さくらん

3/18 ユナイテッドシネマとしまえん にて


全ては、その圧倒的な映像美!


監督:蜷川実花
原作:安野モヨコ
脚本:タナダユキ
出演:土屋アンナ、椎名桔平、成宮寛貴、木村佳乃、菅野美穂、永瀬正敏、美波、遠藤憲一 、
   小泉今日子、石橋蓮司、夏木マリ、市川左團次、安藤政信、他


 8歳で吉原遊郭の玉菊屋に連れて来られた少女・きよ葉は何度も脱走を図るがあえなく失敗。
 気位が高く、絶世の美しさと知性を兼ね備えた完璧な花魁・粧ひ(菅野美穂)は、
 そんなきよ葉に花魁としての生き方を教える。
 やがて17歳になったきよ葉(土屋アンナ)は、玉菊屋にやって来た
 青年・惣次郎(成宮寛貴)と恋に落ちるが…。


その映像が圧倒的に美しかったです。
さすが世界的フォトグラファー・蜷川実花が監督だけあります。


ポップで派手派手でありながらも【奇抜】にまではならない程のよさ
衣裳も美術も自由奔放ながらも【時代錯誤】にまでは至ってません。
さすがに吉原大門の上に金魚鉢が置かれてる風景はシュールでしたが(笑)
他のシーンなんかはポップで大胆ながらも
けっこう違和感なく見られ、美しい映像の数々に圧倒されます。
時代考証をガチガチまでではないものの
程よく取り入れてる、これも【程のよさ】があったからでしょう。


この時代考証の【程のよさ】がないと、アメリカ産「ゲイシャショー」になってしまっていた
「SAYURI」(注1)みたいになってしまいましたし、
自由奔放で圧倒的な映像美がなければ、
豪華な衣裳が売りだったにもかかわらず
画面がえらく安っぽく見えてしまった「大奥」(注2)になってしまっていたでしょう。
この作品がこの2作品と一つも二つ頭もぬきんでた証拠は、ここらへんにあるんでしょうね。


ラストのあの一面の桜と菜の花
私はすっかりCGによる合成だと思ってたら
埼玉の幸手に実際にああいうところがあるらしいですね。
幸手出身の会社の子が言ってたから本当でしょう。
あのピンクと黄色に塗りつぶされた映像は、とにかく圧巻でした。


で、画面の一つ一つが綺麗なだけでは【映画】としては立体的にはなりません。
この作品はそこにストーリーを語る力があるのがいいところ。
蜷川実花は安野モヨコの原作のストーリーラインを極力生かし
ストーリーを語るところは原作及びタナダユキの脚本を最大限に利用しているのが、
ある意味映画監督としては手抜きに映ってしまうかもしれませんが、
「ストーリーは原作と脚本が語ってください、そのかわり映像は私が極力綺麗に撮ります」という
そこはうまく住み分けを行うことで、この作品にストーリーを【語る力】という
スパイスをうまく効かせているのであります。


まぁ先ほどその映像を褒め称えたラストの逃避行は、
結末としてはあまりにも自由奔放で、ちょっと現代的すぎるんじゃないかなぁと、
もうちょっと花魁の世界の厳しさを残した方がいいんじゃないか、というきらいはありますけど、
これはこれで現代に蘇った【花魁の世界】としてはそれなりに違和感なく見られますので、
それほど目くじらをたてる必要もないんじゃないか、と。


最後に簡単に役者陣について。
主演の土屋アンナは蜷川実花の世界観を一手に引きうけていて、その存在感が抜群
見ていてその関係がまるで「カメラマンとモデル」の関係そのもので面白かったですね。
ただしあの【しゃがれ声】がいくらなんでも花魁の世界からは程遠かったようで
彼女だけ花魁でもないなにか別のものに見えてしまったのはご愛嬌。
それはラブシーンがやはり彼女だけ少なかったのにも原因があるのかもしれませんね。
成宮寛貴と土屋アンナのシーンは全くラブシーンには見えませんでしたからね!


逆にラブシーンを一手に引きうけた木村佳乃菅野美穂の方が、
いかにも花魁といった感じで私はよかったと思います。
特にいかにも女性らしいラブシーン演出に応えた演技がよかったですね。
いえ、決して男としてエロ目的で誉めているのではないですよ(笑)。
やっぱり花魁の世界ですからラブシーンは切っても切れない関係ですから。

あと特筆すべきは、こういう作品にしっかり市川左團次のような歌舞伎役者が出演しているところ。
彼一人が作品の中で存在しているだけで、
この作品が時代錯誤にならずに【程よい】品のよさが出たと言っても過言ではありませんからね。
やっぱり歌舞伎役者の存在感って舞台以外でもすごいんだなぁと改めて思わされてしまいましたよ。


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