こだわりの館blog版 -97ページ目

「スウィングガールズ」




タイトル: スウィングガールズ スタンダード・エディション

10/24新宿スカラ座にて
ヒットしているとは聞いてはいたものの公開されてからもう1ヶ月。
新宿地区の上映もまたキャパ50の新宿文化シネマに戻ってしまったか
と思いきや、新宿に着いてみるとなんとあの近辺でいちばん大きい
新宿スカラでの上映。
まだまだ根強い人気です。
当日の客入りもさすがに劇場が劇場だけに満席とはいかないまでも、
そこそこの入り。客層は圧倒的に高校生や大学生。
だけどところどころにオヤジの姿。女子高生好きか映画ファンか。
かく言う私もその一人、もちろん後者ですが(たぶん)。

さて感想ですが
矢口史靖監督、
この作品でひとつのスタイルを創りあげたって感じですね。
「アドレナリン・ドライブ」の頃までは
【普通の人々が遭遇する突飛な出来事】
を描くというスタイルでしたが、
「ウォーターボーイズ」から
【普通の人々が「今までの生活から全くかけ離れたジャンルに飛び込み」
遭遇する突飛な出来事】
と一回りパワーアップしたスタイルを確立。
今回の「スウィングガールズ」も前作のスタイルを忠実に
(忠実すぎるくらいに)守りながらも、
「未知のジャンル」がシンクロからビックバンドジャズと全く異なるため
ワンパターンにはならず、ひとつのスタイルを確立した自信からか、
その演出も堂々たるもので、この作品独自のおもしろさにあふれた出来で
ありました。

もうここまでくるとこのようなジャンルの専門家、
周防正行監督のお株を奪いかねない勢いでありますが、
問題は矢口監督の3作目であります。
【男のシンクロ】【女のビッグバンドジャズ】ときて次は何なのでしょうか。
周防監督も「シコふんじゃった」「shall we ダンス」と立て続けに2作発表し、
さあ第3弾というところで沈黙してしまいました。
矢口監督には是非とも第3弾で「まだこういうジャンルがあったか!」と
目から鱗ものの驚きを感じたいところです。

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文学座「踏台」

10/24紀伊国屋サザンシアターにて
いやあ久々に大笑いできた舞台です。
お奨めします。
千秋楽までまだ数日ありますので、当日券ででもご鑑賞を。

作:水谷龍二 演出:鵜山仁
出演:角野卓造、たかお鷹、田村勝彦、渡辺徹、他

文学座はこれまでも<アトリエの会(小公演)>で、
つかこうへいや松原敏春の作品をとりあげていたものの、
本公演、しかも伝統の紀伊国屋ホールでの公演で、
これほどくだけたコメディを上演してくれたのがなにより画期的です。
4年前、同作家での「缶詰」が初めての試みだったのでしょうか、
再度「踏台」で水谷龍二作品に挑戦した事は
文学座にとっても意義ある公演だったのではないでしょうか。

ストーリーを簡単に書くと
社員の反乱で会社を負われた役員3人組(角野卓造、たかお鷹、田村勝彦)が
今は清掃会社に勤務しており、今日は某広告会社のフロアを清掃中。
そこへ遅くまで会議で残業している企画マンたちが出たり入ったり、
そのうち「部長」と呼ばれる男(渡辺徹)がフロアに入ってきた事から、
清掃トリオたちもトラブルに巻き込まれていくことに…

この作品の魅力は、何といっても等身大の登場人物が、
「リストラ」「残業」「セクハラ」「派閥」といった会社内での
リアルな世界をきっちり<芝居で表現>していること。
しかも新劇にありがちな<現実を深刻に考える>という事が
【代表例:「セールスマンの死」(笑)】
この作品には微塵もなく、深刻な話題をネタにきっちり笑わして
楽しませるということ。

出演者も角野卓造、渡辺徹というテレビでも名の売れた俳優が、
いざ舞台と言う事で肩肘張ることなど無く、
ごく普通の一般市民の世界を演技していて、
それが新劇という世界と妙なミスマッチを起こして
たまらないおかしさを生み出しています。

しかし新劇の老舗「文学座」でこういう芝居を見ると
演劇の世界も時代とともに変動を迎えているな、
と思わざるをえません。
もうこうなってくるとそのうち新劇・商業演劇・新旧小劇団という
用語自体が古くなり、そのうちそれぞれの境目が無くなっていくのでは
ないでしょうか。

「浪人街」

「ナイン・ソウルズ」ですっかり落ち着いてしまった原田芳雄をみて
彼はこんなもんじゃないと、彼のギラギラひかる個性が恋しくなって
久々に見た作品。1990年松竹作品。
共演者に勝新太郎、樋口可南子、石橋蓮司、田中邦衛、杉田かおる。

本年舞台版も上演され、にわかに脚光をあびた「浪人街」ですが
もともとはマキノ雅弘が20代で発表した時代劇の無声映画が
オリジナル(未見ですが…)。

この作品はそのオリジナルの久々のリメイクということで
公開当時は話題となり、松竹系で大ロードショーされる予定が
公開直前、勝新太郎の大麻所持騒動で公開が延期。
数ヵ月後、中規模にてさびしく公開されたという
いわくつきのエピソードを持っております。

確かに大ロードショー公開予定だっただけに、この作品
金かかってます。
セットも立派な作りだし、画面もチープさが微塵もなく
しっかりしておりラストの立ち回りも迫力満点。

お目当ての原田芳雄も期待どおりギラギラしており
ラストの百人斬りもヘトヘトになりながらの大熱演。
本当に人をあれだけ斬ればこうなるという事を体で表現してます。
しかも彼のあの目。完全に<なにかをやらかす>目でありました。
他に特筆すべきは石橋蓮司。
今ではジョージアの課長ですが、この作品の彼は本当かっこいい!
彼は本当はニヒルさの似合う俳優であることを
この作品は証明しています。
そういう私は第7病棟の追っかけですが…。

とまあ、つらつらと感想を書いてきましたが、
この作品を私、公開当時ロードショーで見てるんです。
しかしニヒルな石橋蓮司はおぼえていたものの
他はほとんど記憶になく初鑑賞に近い印象でした。
これだけ豪華でしっかり作品なのに
見た記憶がほとんどなかったのは
ひとえにこの作品が<スキャンダルにつぶされた>
賜物だったからでしょう。

バブル全盛期に制作され、スキャンダルの波にもまれ
10数年の時を経て
舞台版上演記念でやっとWOWOWで陽の目をみるとは
本当この作品は呪われてる、といか言いようありません。

「ナイン・ソウルズ」




タイトル: ナイン・ソウルズ

2002年「青い春」で注目された豊田利晃監督の
昨年劇場公開作ですが、すいません私、知りませんでした。
9人の脱獄囚の逃亡とその後を描いていますが
犯罪を犯した人々というサスペンス感は無く、
何となくのんびりとした雰囲気が全編に漂う
ロードムービーのような作品です。

しかしその“のんびりさ”が作品のメリハリをなくし
見ていて“退屈”なのが何とも残念。
しかものんびりと展開する2時間の上映時間は長すぎ。
これぐらいのストーリーだったら1時間半で十分。
それでいながら9人の登場人物の中でナンだか
よく分からない、説明不足の人もあるのだから、
これは描写にムラがあるんでしょうねぇ。

役者さんですが、

原田芳雄が、さすが9人の中ではダントツですが、
もうちょっと犯罪者としての狂気を見たかったです。
監督は9人のまとめ役として描きたかったようですが、
彼は落ち付くにはまだ早いんじゃないでしょうか。

松田龍平は、引きこもりの犯罪者には見えますが、
あまりにも目立たなすぎ。
途中まで出演すら確認できなかった。

千原浩史と板尾創路の吉本コンビが好演。
と、いうよりも演技してない地のまんまという感じ。

伊東美咲、京野ことみ、鈴木杏、松たか子、と
女優陣が豪華にカメオ出演しているものの、
アッという間の出演につき印象ゼロ。
もうちょっと見せ場を作ってあげても良かったのでは?

「愛しのローズマリー」




タイトル: 愛しのローズマリー 特別編

結構楽しめました。笑えました。
登場する人々が肉体的だったり、精神的だったり
それぞれハンディキャップを背負っているのに、
それをまったく深刻には捕らえずに、
時には差別ギャグで笑いとばす。
それが逆にイヤミになってなく爽快感すら感じさせる
いかにもアメリカ映画らしいコメディであります。

WOWOW放送分をHDDに録画。
まあつまらなかったら消しちゃえと軽い気持ちで録画したものの、
見始めたら一気に見てしまいました。
「華氏911」「ロジャー&ミー」と<病むアメリカ>を
見せつけられた後だったため、この爽快感は捨てがたく、
アメリカンコメディの底力を見せつけられた思いです。

こういう作品はちょっとしたことでクレームになる日本じゃ
まず作れない作品でしょうねぇ。

ところでこの作品で唯一ガッカリしたのはラスト。
主人公ハルの催眠術が解け本当のローズマリーに会うシーン
【すごいデブのローズマリーをハルは催眠術でスリムな美女
(G・パルトロウ)に見えていた】
本当のローズマリーは、G・パルトロウが特殊メイクで
肥満体になっていたのですが
顔はG・パルトロウのままなので(あご肉はかなりついてますが)
はっきり言って…「きれいじゃん!」
G・パルトロウの顔って骨格がはっきりしているから
…「逆にこの方がいいかも!」。
それだったらぜんぜん違う役者さんが演じたほうがよかったかも。

だって、あの【心の醜い看護婦】役のあのオバサン!
これは見た人でなければわからない。
もう、すごい顔!デビッド・リンチなら喜んですぐ出演依頼ですよ!